これらの資料は「叱ること(指導)」そのものを全否定しているのではなく、「『不適切な叱責』や『命の危機にある場面での叱責』は避けるべきだ」という文脈で書かれています。

ただ、現場の感覚として「じゃあどうすればいいのか」「何も言えなくなってしまうのではないか」と萎縮してしまうような書きぶりであることも事実です。

資料全体を読み解くと、禁止されているのは「叱る行為」そのものではなく、以下の3つのパターンであると整理できます。

1. 「緊急時の対応」としての禁止

「TALKの原則」の場面は、相手が「死にたい」と思うほど追い詰められているクライシス(危機)介入の状況です。

ここでは、教育的な指導よりも「命の安全」と「受容」が最優先されるため、「叱責」は明確にNG行動となります。これは平常時の指導とは切り分けて考える必要があります。

2. 「不適切な方法」の禁止

文科省の通知等でも強調されているのは、指導の効果を生まない、あるいは逆効果になる「やり方」への警告です。 

威圧的・感情的:大声で怒鳴る、物を叩く。
一方的:相手の言い分を聞かない、事実確認をしない。
尊厳の侵害:皆の前で叱る、執拗に長時間叱る。
全否定:人格や存在自体を否定するような言葉。


3. 「信頼関係とフォローの欠如」への警告(画像3・6枚目)

教育上必要と認められる「懲戒(叱責を含む)」は認められています。
ただし、そこには以下のセットが必要です。 

事実確認:本人の言い分を聴くプロセス。
事後のフォロー: 叱った後に一人にしない、孤立させない。
立ち位置: 「対峙(向かい合う)」して詰問するのではなく、「並走(隣に立つ)」して一緒に考える姿勢。



まとめ

これらの資料が伝えているのは、「『叱る』というカードを、唯一の、あるいは最初の手段にしてはいけない」ということだと読み取れます。

行動を変えるためには「叱責(ストッパー)」だけでは不十分で、「適切な行動を教え、褒める(アクセル)」という指導のアプローチが必要不可欠です。

結論として、
「叱ってはいけない」のではなく、「信頼関係を土台にし、相手の言い分を聞き、人格を否定せず、事後のフォローができるなら、教育的な叱責(指導)は成立する」というのが、これらの資料の真意ではないでしょうか。

ただ、今の学校現場ではリスク管理の観点から「叱らない」ことが安易な解決策として選ばれがちですので、先生が懸念される「叱っては駄目という誤解」が広まること自体が、逆に教育力を低下させる懸念もありますね。