日本の学校では、教師が全員に同じ内容を同じペースで教える一斉授業が一般的です。しかし一斉授業には、「十分理解できないまま次の単元に進んでしまう」「授業のペースが遅く物足りない」と感じる児童生徒が出るなどの課題もあります 。こうした課題を解決するために注目されているのが、自由進度学習です。自由進度学習とは、児童生徒自身が学習計画を立て、自分で決めたペースで学習を進める方法のことです 。各自の興味関心や習熟度に合わせて学ぶことで、理解の早い子もさらに深く学び、時間のかかる子も納得いくまで取り組めます。そのため「成績が上がりやすい」というメリットがあると指摘されています 。また、2021年の中央教育審議会答申「令和の日本型学校教育」をはじめ文部科学省も、一人ひとりに最適な学び(個別最適な学び)と集団で協働する学び(協働的な学び)の一体的な充実を目指す中で、この自由進度学習を有効な学習形態の一つとして言及しています  。ICT環境の整備(いわゆるGIGAスクール構想による一人一台端末の配備)も追い風となり、児童生徒が自分のペースで主体的に学ぶ新しい授業スタイルとして自由進度学習が全国で注目されています。
なお、自由進度学習そのものは決して全く新しい概念ではありません。例えば1970年代には愛知県緒川小学校で、オープンスペース型の教室を活用し「単元内自由進度学習」や「オープン・タイム」といった個別化学習の実践が行われていました 。しかし近年になってから、行政による推進やICTの活用、現代の教育目標(主体的・対話的で深い学び)への合致といった背景から、公立校でも本格的に導入する動きが広がり始めています 。

2025/02/26 13:18