自由進度学習は、全国各地の小学校で徐々に導入が進んでいます。たとえば広島県廿日市市立宮園小学校では、2020年から一部の授業で単元内自由進度学習を取り入れました 。単元のはじめに教師がその単元の「学習計画表」を配布し、児童はそれを見ながら自分の学習計画を立てます 。教材もタブレット、プリント、教科書など自分に合ったものを選んで学習を進めることができ、児童同士で教え合う場面も自然に生まれています  。宮園小ではICTを活用し、AIドリル(Qubenaなど)と紙の教材を併用する形で実践し、必要に応じて教師が少人数に教えることもあります 。こうした自由進度学習の実証研究は既に終了しましたが、その成果を受けて現在も取り組みを継続しているとのことです 。

また、広島県江田島市立三高小学校の事例は、複式学級(異なる学年の児童が同じクラス)という少人数校の特性を活かしながら自由進度学習を実践したものです。児童それぞれが思い思いの方法・ペースで学習を進める中で、わからないことがあれば年齢に関係なく子ども同士で教え合うようになりました 。その結果、待ち時間が減って快適に学習できるようになり、子どもたちの学習意欲が大きく向上しています 。導入後には市の学力テストの点数が大幅に上昇し、「わかる楽しさ」を実感したことが意欲向上と成績アップの要因の一つだと教師は分析しています 。自由進度学習によって子どもたちが自主的に学ぶ姿勢へと変化し、教師側も「強制しなくても主体的に学ぶようになる」「子どもには本来『学びたい』という強い意欲があるのだと実感した」と語っています 。

さらに山形県天童市立天童中部小学校では、単元内自由進度学習に「マイプラン学習」と名付けて実践しています 。決められた単元の内容を各自が立てた計画に沿って学びますが、特徴的なのは2つの教科を並行して進めるカリキュラムになっている点です 。例えば算数と理科を同時に学習計画に組み込み、45分授業の中で配分を自分で決めて進めることで、時間の柔軟な使い方を可能にしています 。理解が不十分な児童は基礎的内容に時間をかけ、余裕のある児童は発展的な内容に挑戦するといったように、一人ひとりに合ったレベルで学習を深める工夫をしています 。決められた時間内で単元の基本事項は確実に習得させつつ、余った時間や並行学習を活用して個々に充実した学びを実現している例と言えます。

このほか、都市部では名古屋市立山吹小学校がオランダ発祥のイエナプラン教育の考え方を参考に、児童が自ら学習計画を立て振り返る学習者主体のカリキュラムに取り組んでいます 。名古屋市全体で「NAGOYA School Innovation」として個別最適な学びの充実を進めており、山吹小ではその一環で教員研修を重ねるなど学校全体で体制を整えているのも特徴です 。