はじめに
    本書を手に取っていただき、ありがとうございます。
本原稿を書いているのは、2021年2月1日。数日前、研究発表会が終了しました。その研究発表会では、1年生の算数の単元全ての動画を公開しました。
その授業を見た参観者のみなさんから、ありがいことに「ここまで1年生でできるのか!すごい!」「樋口先生の授業、良かった!」とお褒めの言葉をいただくことが多くありました。
そのように言っていただいて、とても嬉しいのですが、すごいのは私ではありません。すごいのは、1年1組34名の子ども達なのです。また、1年1組に関わっている全ての先生がすごいのです。そして、保護者のみなさんがすごいのです。謙遜して・・・と思われたかも知れませんが、心の底から思っていることです。担任ができることには限界があります。子ども達のことを受け止めるには、様々な力が必要なのです。
子どもの言動から「1年生は宇宙人だ」と言われる方がいますが、これは間違えています。そのように捉えてしまう教師の思考が「宇宙人」なのです。まぁ、間違いなく、私自身が小学1年生のときには先生からそのように言われていたことでしょう。
1年生の子ども達は「宇宙人」ではなく「無限の可能性がある」人なのです。我々、大人よりも遥かに無限の可能性があるのです。そのキラキラした無限の可能性から目を逸らしてはいけません。
    では、1章ではどのようことを意識しながら取り組んでいったのかというマインド面を、そして2章以降ではどのような実践をしていったのかを紹介していきます。
    本書が、初めて1年生を担任する先生、1年生の指導に困っている先生などの少しでの一助になれば幸いです。また、1年生を甘く見ている先生に届いてほしい。そんな思いで本書を書きました。
樋口万太郎





おわりに
「1年生の担任は避けたい」「1年生以外の担任が良い」
そんな話を聞いたことがあります。というか、20代の頃の私が言っていました。
そんなことを言っていた私は教職18年目になりますが、1年生の担任を3回経験してきました。20代の頃は5・6年生を担任することが多かったのですが、いつの間にか同じ回数になっていました。
    今思えば、1年生を担任するときは何かの節目ということが多かったです。そして、自分がアップデートするきっかけになる1年にどのときもなっていました。小学校に入学してくる1年生に私自身が学ばせてもらっていたのでしょう。教育観、授業観もどんどん変わっていきました。だから、1年生を担任していなかったら、今の私はいないことでしょう。本書にかいているような実践をしていなかった可能性もあります。
    本書はオーソドックスの本というより、ちょっと癖のある本に仕上がったように思います。でも、子どもたちがアクティブになる要素や昭和型の1年生教育では令和型の1年生教育をという思いを全て詰め込みました。本書が少しでも、みなさんの一助になれば幸いです。
    そんなことを言っておきながら、私以外の担任であれば、もっとこの子達の成長を促すことができるのかではないかということも毎日考えていました。常に不安でした。やはり、小学校生活6年間の第一歩の1年なのですから。子どもだけでなく、保護者も初めて小学校に通わす方も多いです。いわば、保護者も保護者の立場としての小学校1年生なのです。それは誰もがプレッシャーも思うものです。
    初めて1年生を担任した子を4年生のときに改めて受け持ちました。しかし、そのときの子どもたちの様子は全く違いました。荒んでいるようにもみえました。どこかのタイミングで、「1年生のときを思い出して!」と子どもに言ったことを覚えています。
    また担任した子どもたちが2年生になったとき、学級がしんどくなりました。「私がもっとこの子達を1年生のときに成長させることができたら・・・」と自分を責めたこともあります。だから、この子たちが成長するまではこの学校にいて、陰からサポートをしようと決意をしました。だから、毎朝校門に立ち、みんなとコミュニケーションをとるようにしていきました。6年生で算数を週1時間教えることができると知ったとき、どれほど嬉しかったことでしょうか。
    そんな子どもたちも2022年の春に卒業していきました。この子達も中学校に進学するため、この子達の成長に直接に関与することはできません。もう見守っていくしかありません。でも、安心はしています。きっともっと成長し、力をどんどん付けていくことができるからです。それだけの無限の可能性をたくさんみせてくれたからです。いや、この子たちに限らず子どもたちには無限の可能性があるのです。スポンジのように様々なことを吸収していく子どもたちにうらやましさを感じたこともあります。
    私事ですが、2022年4月に学校をかわりました。2021年は1年生の担任を途中からしていました。だから、この子達の成長に直接に関与することはできません。この子たちのこれからの成長を見ることができないことが学校を去るときの唯一の心残りでした。だから、遠くからみなさんの成長を、そして幸せを祈り続けております。ステキな大人になってください何か1年生と縁があった2021年度でした。
つまり、1年生で受け持つとその後の様子を担任でなくても、その学校にいる限りみることができます。だから、1年生で担任をしたから終わりではなく、本書を読まれているみなさんもその後の成長を少しでもみてくれたら嬉しいなと思っています。そこには、また別の楽しさがあることでしょう。
    さて、次はいつ1年生を担任するのかな。楽しみです。
樋口    万太郎