自由進度学習を導入した学校からは、児童生徒の学習意欲や学習態度の大きな向上が報告されています。実際に「勉強が苦手で一斉授業では意欲を欠いていた子が、自由進度学習を始めたところ積極的に学習に取り組むようになった」という結果も出ています 。自分で学習計画を立てて学ぶことで「学ぶ楽しさ」に気づき、自分の学習に責任を持てるようになることが動機付けにつながるためです 。早く終わった子も待ち時間なく次の課題や発展問題に取り組め、逆に時間のかかる子も周囲に急かされることなく理解できるまで取り組めるため、誰も置き去りにならずに済みます 。このように一人ひとりが自分のペースで進められる環境では、「待ち時間」などのムダが減り効率良く学べるため、ある教師は「一斉授業の5〜7割程度の時間で必要な学びを習得できるようになった」と感じるとも報告されています 。
学力面での成果も期待できます。前述の苫野一徳氏(教育学者)は「自由進度学習は学びが早い子にとっても、時間がかかる子にとってもプラスになり、成績が上がりやすい学習方法だ」と述べています 。事実、広島県三高小学校では自由進度学習の導入後に学力テストの平均点が大きく向上しました 。理解度に応じて基礎から着実に積み上げられるため、学力の底上げにつながりやすいと考えられます。一方で習熟の早い児童にとっても、自由になった時間で発展的な課題に挑戦したり友達に教える経験を積んだりできるため、学びの深化や表現力の向上につながっています  。
自由進度学習は協働的な学び(学び合い)も生み出します。自分のペースで進めるとはいえ、決して孤独な「自習」をさせるわけではありません。分からないところが出れば友達同士で教え合ったり、進んだ児童が他の児童をサポートしたりすることが各地の実践で見られています 。異なる教科を先に学習した子同士で教え合うことで、個別の学びでありながら自然な協働学習の要素も生まれたという報告もあります 。このように他者に説明することで理解が深まる効果や、教わる側にとっても質問しやすく待ち時間が減る効果が確認されています 。児童生徒が主体的・協働的に学ぶ姿勢が育まれる点は、まさに現代の教育目標と合致する成果と言えるでしょう。
教師側にもメリットがあります。子どもたちがそれぞれ異なる課題に取り組んでいることで、誰がどの部分でつまずいているか把握しやすくなると指摘されています 。一斉授業では見落とされがちだった個々の理解度が見える化されるため、必要な声かけや個別指導がしやすくなるのです 。実際にICTを活用した自由進度学習では、タブレットに蓄積される学習ログや自動採点のデータによって、教師が全員の進捗を把握できるよう工夫している例もあります 。そのデータをもとに、理解が遅れている児童を早めにフォローしたり、逆に高度な課題に挑戦している児童に追加の助言をしたりと、きめ細かな指導が可能になります 。さらに子どもたちが自主的に学ぶ姿を目の当たりにすることで、教師自身も子どもの可能性を再発見したり、新たな指導観を得たりする効果も報告されています 。

2025/03/01 13:21